(1)第一には、今まで達成されてきた「日本建築様式史」の全体の再点検を行う。太田博太郎氏の研究は、日本を代表する「建築様式史」として、多くの建築家、研究者が依拠してきたのだが、現在の段階では、時代背景の思想と関連付けて、研究そのものの動機を明らかにし、研究のもつ含みを明らかにすることが重要である。そこで提案された様式について、必要に応じて再定義を進めることが重要と考える。また、多くの疑問があって学術語の再定義ができない場合にも、それを解決するために必要な作業を見通しておく必要がある。 具体的には現地調査と研究史整理の作業を行う。 (2)第二に、これらの検討結果を持ち寄り、分野を超えて議論を行い相互の関連を検討する。従来の日本建築史の分野では、ジャンルを超えて研究を行う慣例がほとんどなかった。例えば、寺院が「和様化」する、との表現はしばしば用いられてきたが、多くの場合寺院が住宅の要素を取り込んでいく過程のことを言っているようだが、これについて寺院史と住宅史の研究者が同-の場で議論を行うということはかつてなかった。各種の建築は、ある時代に同時に共存しているのであるから、そのような現象について、それぞれの分野の課題として取り込んで検討する必要がある。また、本来横断的な視点で開始されたはずの建設組織研究は、実はそれだけで完結してしまう傾向が強かった。今回の研究では、建築を造るという視点から、各ジャンルを横断的に取り扱う必要がある。 具体的にはシンポジウムを開催して、積極的な討論を行う。 (3)第三に、これらの検討の結果を基礎にして、アジア研究者との交流を通して、東アジアの中での比較検討を行う。特に中国、韓国という同-の木造建築文化圏の建築様式の比較を行い、そのなかにおける日本建築の様式の特質を検討する。最終的には、東アジアの建築様式全体の構図の素描と、その中での日本の建築様式の固有性を把握することが目標である。 具体的にはシンポジウムを開催して、積極的な討論を行う。
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