研究概要 |
酸化物の多彩な機能と密接に関係する非化学量論性(ノンストイキオメトリ)について,構造と自由エネルギー,機能の一般的な相関性を解明することを究極の目的とし,高精度の第一原理計算と情報科学手法を組み合わせた新しい第一原理熱力学手法の開発を進めた.このような計算と従来の実験からのアプローチが決定的に異なるのは,第一原理計算法を適用するためには,まず原子配列を精確に知ったうえでエネルギーを算出する必要がある点である.これは換言すれば,欠陥構造とエネルギーが同時に評価できることになる.統計的処理は,任意の温度,圧力,化学ポテンシャルのアンサンブルのもとで行うことができる.これは上述の相関性を解明する上で極めて好都合である.この手法を用いて様々なノンストイキオメトリ酸化物について具体的な計算が可能となる. 本年度は,高精度の第一原理計算と情報科学手法を組み合わせた新しい第一原理熱力学手法を開発し,TiO2-x, SnO2-xなどのノンストイキオメトリ系に適用した.具体的には,様々な酸化物についての系統的な検討を行い,構造と自由エネルギー,機能の一般的な相関性を解明するために,クラスター展開法などの統計力学手法を開発すると同時に,平均場近似を超えるLDA+U法やハイブリッド法による交換相関相互作用の取り扱いも開拓した.これをTiO2-x系に適用した結果,実験により報告されているシア構造が系統的に再現された.また,SnO2-x系については,一連のホモロガス構造を有する新しい規則相の存在が予測された.
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