研究概要 |
セルロースナノファイバーとしてバクテリアセルロースを取り上げ,超臨界二酸化炭素を用いることでプロセスにも環境調和性を配慮したアセチル化手法を確立した。さらに,溶媒を用いることなく,加熱による溶融成形を経ることで新たな全セルロース複合材料を創製することに成功した。この複合材料は耐熱性,力学物性に優れるエコ&ナノ複合材料であることを見出した。さらに,バクテリアセルロース存在下でのラクチドのその場重合を行うことで,分子レベルでセルロースとポリ乳酸を複合化することが可能となった。単にポリ乳酸とセルロースからなる複合材料に比較して,同複合材料は力学物性に優れ,本来結晶性であるポリ乳酸が非晶状態で留まるなど構造上も興味ある現象を見出した。この際,申請備品であるX線回折装置を極めて有効に活用することができた。ここで見出した現象は閉塞空間における結晶化について新たな知見を与えるものと期待でき,構造の観点から派生研究を生み出した。また,セルロースナノファイバーを用いることで鉄よりも強靭性に優れる材料をナノペーパーと名付け,スウェーデンのベルグランド教授との共同研究として発表したところ,ニューヨークタイムスや月刊誌ニュートンで取り上げられるなど大きな反響を呼んだ。このように,セルロースナノファイバーを用いたエコ&ナノ複合材料に関する本基盤研究は順調に初年度を推移することができた。平成21年度には引き続き本研究を発展させる計画である。
|