研究概要 |
セルロースナノファイバーとしてバクテリアセルロースに加えて,グラインダー処理により得られたナノファイバーを取り上げて研究を進めている。まず,バクテリアセルロースを利用した研究としては前年度に製造法を確立した,プロセスを含めた全セルロースナノ複合材料について構造・物性の詳細な検討を進めた。その結果,同複合材料が耐熱性,力学物性に優れ,光透明性を併せ持つことから,セルロースアセテートのナノ補強の観点からも優れた材料であることを見出した。また,バクテリアセルロース存在下でのラクチドのその場重合により得られたセルロース/ポリ乳酸ナノ複合材料においても構造・物性評価を行い,本来結晶性であるポリ乳酸が非晶状態で留まる現象について検討を加えたところ,重合プロセスでポリ乳酸がセルロースにグラフトし,なおかつナノ次元での閉鎖空間中で分子運動が極めて制限されたことに基づくことを解明した。このことはまた閉塞空間における結晶化について新たな知見を与えるなど構造上も興味ある現象である。この際,主な申請備品である原子間力顕微鏡を極めて有効に活用することができた。さらに,グラインダー処理により解繊されたセルロースナノファイバーを充てん繊維としたセルロースアセテート複合材料,セルロースナノファイバーをマトリックスとし,ここにナノダイヤモンドを充てんした,いずれもエコ&ナノ複合材料の創製に取り組んでおり,着実に成果を挙げている。このように,セルロースナノファイバーを用いたエコ&ナノ複合材料に関する本基盤研究は順調に2年次を推移することができた。平成22年度には引き続き本研究を発展させる計画である。
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