研究概要 |
金属材料に巨大歪勾配を伴う形状不変加工法を使って巨大ひずみを与えることにより、高強度化と高延性化バランスに優れた材料を創り出す方法を明らかにすることを目的として、当年度は以下の研究を推進した。 1)高圧相の安定化(戸高) 純Ti,純Zr、純Fe,およびFe-Mn-C合金を使って、高圧下で巨大歪加工を行い、高圧相を生成させ、常圧下での安定性を調べた。その結果、純Ti,純Zr、では高強度の高圧相であるω相が室温・常圧下でも、残留し、材料の高強度化に利用できることが判明した。一方純鉄では高圧相のε相は常温・常圧下では残留しないことが判明した。そこでε相を安定化するMnを種々の量添加したFe-Mn-C合金で高圧下で巨大歪加工を行い、常温・常圧下で高圧相を残留させることに成功した。 2)動的変態強化(戸高) SUS304ステンレス鋼に高圧下で巨大歪加工を行い、生成した加工誘起マルテンサイトの焼鈍による高強度化を調べた。その結果焼鈍による高強度化は100%マルテンサイト組織でも起こることが判明し、高強度化の原因がマルテンサイト割合の増加と無関係であることが判明した。市販のSUS304材でHPTを使った超強加工と400℃焼鈍を組み合わせることで、引張強度2.5GPa以上、硬さ8GPaの超高強度化が達成できることが明らかとなった。 3)粉末の固化成形と高強度・高電気伝導性の両立(梅本) 高強度・高電気伝導性の銅複合材の開発を目的に、粉末原料をHPT加工し、強度と電気伝導性を調査した。 純成分のCu,Nb,C粉末の混合物にHPT加工を加えることで、室温で固化成形が可能であった。HPT加工中にNbCの炭化物が一部生成したが、NbC炭化物はHPT加工後の焼鈍で増加した。NbCの体積割合が1と2%の時に、引張強度600MPa以上、電気伝導度が純銅の50%以上を達成した。この研究から、HPT加工により、粉末の固化成形が可能であり、特に銅複合材料では高強度・高電気伝導性の両立した高機能材料の作製が可能であることが判明した。
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