研究概要 |
耐候性鋼製のくし型プローブ電極を試作し、新潟市の苗引橋と福山市の両国橋(いずれも耐候性鋼橋梁)において、耐候性鋼の腐食モニタリングを2年間実施した。モニタリングは電気化学インピーダンス法の原理に基づき、高周波数(10kHz)のインピーダンスZ_<10kHz>と低周波数(10mHz)のインピーダンスZ_<10kHz>の2点周波数におけるインピーダンスを1時間毎に連続的かつ自動的に測定することにより行った。また、気象データとして温湿度を同時にモニタリングし、実際の腐食減量を耐候性鋼のクーポン試験片を暴露することにより計測した。 得られた成果は以下の通りである。 (1)低周波数のインピーダンスの逆数1/Z_<10mH>の平均値は、腐食減量から得られた平均腐食速度I_<corr>,と極めて高い相関を示し、以下の相関式を得た。I_<corr>/mAcm^<-2>=17.7×(Z_<10mHz>/Ωcm^2)^<-0.16> この結果から、1/Z_<10mH>を耐候性鋼の大気腐食の指標をして使えることが示された。この相関式によりモニタリングデータから直接平均腐食速度を推定することが可能となった。 (2)1/Z_<10mH>は相対湿度に強く依存し、85-90%RH以上において急激に増加する。また、一定湿度における温度依存性を調べた結果、1/Z_<10mH>は温度の増加にほぼ比例して増加することがわかった。今後、気象データとの相関を明確にしていくことにより、気象データから腐食減量を推定することが可能になるものと期待される。 (3)高周波数のインピーダンスZ_<10kHz>から、当初、表面の濡れ時間の情報を期待していたが、大気腐食系の場合、電解液(結露により水膜)が極めて少ないため正確な液抵抗成分を計測することができないことがわかった。ただし、濡れ時間に関しては低周波数のインピーダンスにより計測可能である。
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