研究概要 |
本年度はユニット合成に関する根幹となる論文を発表し、触媒分野における5族、6族を主構成元素とする酸化物触媒の新しい合成方法論を提示した。 この考えに基づき、前駆体水溶液のpHを変化させることで斜方晶系と三方晶系のMoV複合金属酸化物触媒の結晶つくりわけ制御が可能であり、また使用するMo原料試薬のNH_4/Mo比を減少させると三方晶の生成pH範囲が広がることを見出した。水熱合成溶液中のモリブデン-酸素の5角形ユニットを有するMo_<72>V_<30>組成のポリオキソモリブデート濃度のpHとNH_4/Mo比依存性を調査し、三方晶の生成には低pHで5角形ユニットが安定に存在することが必須であることを明確にした。また、結晶成長に対する水熱合成温度の影響も検討し、高結晶性斜方晶Mo_3VO_x酸化物の合成に成功した。 また,ユニット合成をMoやV以外の5族、6族を主構成元素とする複合酸化物の合成に展開し、類似構造体がMo-Nb-O,W-Nb-O,W-Ta-O,Nb-O,Nb-V-Oでも生成することを見出した。特に、Mo-Nb-Oは、棒状粒子が乱雑に積み重なる形でワームホール型のメソ孔性物質を構成し、Nb比の上昇に伴い棒状粒子が発達することによって粒子間の間隙が大きくなり、孔径が大きくなることを見出した。同様のことはNb-Oにおいても起こり、極めて単純なNb_2O_5触媒でありながら、極めて効率よく芳香族のベンジルアルコールによるアルキル化に活性を示し、アルキル化物を得ることができた。通常酸化ニオブは酸触媒として知られ、この反応にも活性を示すが、本研究で合成した触媒活性に及ぶものではなく、ミクロ細孔構造形成の重要さが触媒反応においても明確となった。
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