研究課題/領域番号 |
20246117
|
研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
井上 泰宣 長岡技術科学大学, 工学部, 特任教授 (30016133)
|
研究分担者 |
西山 洋 長岡技術科学大学, 工学部, 助教 (50303186)
|
キーワード | マイクロリアクター / 弾性表面波 / 酸触媒 / 液相反応 / 有機合成反応 / 格子変位 / 強誘電体 / 圧電効果 |
研究概要 |
本研究では、液相系の有機合成反応に対する触媒の効率を顕著に高める方法を確立することを目的とし、表面格子を強制変位させることができる弾性表面波効果とマイクロリアクターと組み合わせる新規なシステムについて検討した。強誘電体基板として、レーリー波を発生できる128°回転 y カットLiNbO_3単結晶およびSH波を発生できる36°回転 y カットLiTaO_3単結晶を用い、結晶両端に双対のクシ型電極をもち20MHzの周波数の弾性表面波を発生できる弾性表面波素子をフォトリソグラフ法により作製した。マイクロリアクターは、作製した弾性表面波素子を組み込むことができ、液体層の厚さ250μm、反応容積5.5mm^3をもち、反応液体をマイクロシリンジ注入による混合後、マイクロチューブを通して空気圧にて反応部へ誘導できる構造の流通型マイクロリアクターとした。作製したマイクロリアクターにおいて、反応液体存在下で弾性表面波の伝搬が可能であり、レーリー波よりもSH波において、高い伝搬が生じることを示した。弾性表面波素子を組込んだマイクロリアクター内での、スカンジウムトリフラート (Sc(OTf)_3) 酸触媒によるベンズアルデヒドとアセトフェノンからカルコンを生成する有機合成反応において、触媒活性がレーリー波およびSH波の弾性表面波の伝搬により、それぞれ2.1および6倍増加すること、反応温度依存性より反応の活性化エネルギーが弾性表面波の存在下で70%も減少し、弾性表面波が反応のエネルギー障壁を低下させること、および弾性表面波発生用の印加電力の増加とともに触媒活性は顕著に増加する非線形効果を持つことを見出した。レーリー波とSH波の振動モードの比較より、触媒活性化効果は、表面に垂直な周期性 (動的) 格子変位に起因する機構を示し、液相合成反応に対する触媒の活性化に弾性表面波効果は有用であることを明らかにした。
|