研究概要 |
初年度の研究計画に従って,数値シミュレーションおよび実験の両面で研究を進めた.前者については,定常翼流れを対象にして,まず基礎となる数値シミュレーションプログラムを開発した.続いて,2次元翼を対象とした実験事実を元に人工的に翼面付近にDBDアクチュエータによる誘起流れ(体積力)を付加し,その領域や強さを変化させることで,どの領域に,またどの方向に作用させるのが有効なのかを数値シミュレーションによって評価した.その結果,境界層の最下面付近が効果的であること,領域の広がりよりトータルの体積力が効いていること,実際のアクチュエータにおいて(水平力に加えて)生ずる垂直力は剥離制御に影響を与えていないことなどが明らかになった.実験面では,安全性の面で当初予定の機器の利用が難しくなったことから,導入を予定していたPIV装置の設置が年度末の3月になり,基礎誘起流れおよび翼流れのPIV計測の準備を開始したところである.この状況を考慮し,実験的には当初予定の研究計画(3)を集中的に進めることとし,超音速風洞においてキャビティ模型を利用した高速流におけるDBDアクチュエータ効果の可能性を探る実験を進めた.予想通り,電気的なノイズレベルが高かったが,絶縁などの工夫によって定性的な効果を見ることができるようになった.以上の結果は,国内外のシンポジウムでその成果を発表,もしくは次年度に発表を予定している.また,申請書の3年間の研究計画にあるように,数値シミュレーション手法の高精度化が今後の大規模シミュレーションに,またデータ探査手法が時空間での物理現象の因果関係を理解するために不可欠となるため,それぞれ別のアプリケーションへの利用を通じて研究をはじめている.前者についてはすでにジャーナルに投稿中,後者については,簡単な翼流れベース流れを対象に手法の有効性を調べ,本研究に有用な道具開発を進めている. 研究分担者は初年度として本研究目的を意識したそれぞれの専門分野での成果(李家:翼廻り剥離流れの解析,船木:プラズマ現象の理解)を挙げており,2年目以降にその成果を一体化して研究目的に迫る予定である.
|