研究概要 |
平成20年度は,均一混合充填方式を採用した水-水素化学交換反応塔による水素同位体分離について,軽水素-重水素系の試料を用いた実証試験を完了し,また,独自に開発した「通り抜け段モデル」による反応塔の分離性能評価手法が妥当であることを確認した。これらの成果をもって,平成21年度は,軽水素-トリチウム系の試料を用いた実験に着手した。 反応塔は内径2.5cm,有効充填長60cmまたは100cmである。充填物は白金触媒であるKogel触媒と親水性充填物のDixon gauze ringであり,白金触媒の充填割合を30%とした。この割合は,軽水素-重水素系の実験で最大の分離性能を発揮した最適値である。水素は,最大発生量が1Nm^3/hのSPE電解槽を用いてトリチウム水を電解して発生させ,流量は5,6,8L/minとした。水素ガス,水蒸気,液体水のモル流量比は,いずれの場合も1.0:0.44:1.4となるように調整した。使用したトリチウム水の濃度は,最大で0.21MBq/ccであった。定常到達時の濃度を,あらかじめ「通り抜け段モデル」によって予測し,試料の初期値として用いることで,定常到達時間を短縮した。有効充填長100cmの反応塔で,水素ガス流量が5L/minの場合に,当実験室で使用可能なトリチウムの最大量を用いて,分離係数として19200を得た。「通り抜け段モデル」による分離係数の予測値は19400で,軽水-トリチウム系の試料を用いた場合でも,十分精度良く分離性能を予測できることがわかった。
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