研究概要 |
平成23年度は,22年度に行った実験結果に基づいた閉構造ダイバータ実験を継続して行った.本年度はバッフル構造の増設・改造は行わず,計測器の整備を進めた. 将来の燃焼炉において,ダイバータには核融合反応の結果生じる「ヘリウム灰」を排気する能力が求められる.本研究では,閉構造ダイバータがヘリウムの挙動にどのような影響を与えるか調べるために,新たに「ペニング分光計測」を整備した.本計測は,従来困難であった強磁場下におけるヘリウムと水素の分圧測定を,高時間分解能で行うことが可能である.精密な較正実験の後,水素放電中にヘリウムをパルス的に入射し,バッフル内外のヘリウム分圧の時間変化を調べた結果,バッフル内でヘリウムのリサイクリング率が大きく,長時間保持されることが明らかになった.これは将来ヘリウム排気を考える際,重要な示唆を与える結果である. 本年度はまた,これまでダイバータ・周辺プラズマの温度分布・密度分を計測するために開発してきた「ヘリウムビームプローブ」をLHDに設置し,予備的な実験を開始した.計測時,プローブビームがプラズマに与える擾乱は十分小さいが,ビームの広がりによる空間分解能の低下が著しいことが判明した.来年度更なる改良を行う予定である. シミュレーションコードの整備も継緯して行い,3次元流体コードであるEMC3-EIRENE用に,ダイバータレッグのグリッドを作成した.これにより,ダイバータプラズマのシミュレーションの精度が,従来の2次元モデルと比較して格段に向上することが期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は,閉構造ダイバータを建設し,それを用いた積極的な周辺制御によってプラズマの高性能化を目指すことを目的としている.最終年度を迎える現時点において,既に閉構造ダイバータのLHDへの設置(2セクション)を終えており,初期実験でダイバータとして十分な中性粒子圧縮性能が得られることも示した.今後,閉構造ダイバータの増設を行うことから,研究がさらに深化する可能性がある.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,これまでに得られた研究成果に基づいて閉構造ダイバータを増設するとともに,クライオポンプ1基をバッフル内に設置する.これによってLEDは,世界で初めて粒子の圧縮と排気が可能なヘリカルダイバータを備えた装置となる. このような環境下で,今後は本研究の最終目的である「ヘリカルダイバータの閉構造化による閉じ込め改善」を目指す.さらに,将来り燃焼プラズマを見据えた実験として,ダイバータ領域におけるヘリウムの挙動を,昨年度新たに導入した「ペニング分光計測」を用いて明らかにするとともに,最終年度として研究の総括を行う.
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