研究概要 |
放射性廃棄物地層処分において,地下環境は天然バリアと呼ばれ,岩石亀裂内への核種の拡散や鉱物表面への核種の吸着を通して,その移行を遅延させるバリア機能が期待されている.一方,コロイドに吸着した核種は,コロイドと共に地下水中を移行し,その移行が促進される.放射性廃棄物処分安全評価の信頼性を向上させ,合理的な処分システムを実現するためには,このような吸着現象を理解することが必要となる.本研究の目的は,近接場光法を鉱物/水界面に適用し,実地下環境を構成する鉱物表面を構成最少単位である結晶面での核種の吸着構造を同定する手法を開発すると共に,得られたスペクトルや蛍光減衰挙動と鉱物の結晶面の構造に関する知見およびほかの表面に敏感な構造同定手法の結果との比較から,得られた吸着構造に基づいた新たなSCMを提案し,放射性廃棄物処分の安全性向上に貢献することである. 平成20年度は,当研究グループが所有するNd:YAGレーザ,分光器,CCDカメラ,時間遅延発生装置に,購入した近接場光のプローブ部を組み込むことで,時間分解測定が可能なin-situ近接場分光システムを構築した.特に,鉱物/水界面における核種の蛍光あるいはラマン散乱のin-situ測定のために,界面近傍および吸着核種周囲の化学的環境を可能な限り保持したまま測定を行えるよう,試料ステージを改良し,試料室の湿度・温度保持機能を追加した. さらに,構築した近接場光システムの性能評価を行うための系を選定するために,模擬核種(Eu3+)を吸着させた鉱物試料の時間分解型レーザ蛍光測定および時間分解型レーザ顕微測定を行い,マクロなレベルでの,吸着Eu3+の発光スペクトルとその時間変化を異なる溶液条件において評価すると共に,得られた結果を鉱物表面の構造や不均質性の点から考察した.また,選定した鉱物を用いて,システムの性能評価を継続している.
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