研究概要 |
本研究は,核種として,UO_2^<2+>あるいはEu^<3+>を用いて,核種/粘土鉱物系での吸着データを幅広い環境条件で取得する.核種/合成鑑物系のin-situ近接場光蛍光顕微測定を行い,そして,既往研究との比較を通して,吸着構造の妥当性,表面の不均質性の影響を検討する.また,得られた知見をSCMに反映させ,結晶レベルでの表面の不均質性を考慮した吸着のモデル化を行うことを目的としている. これまでの研究において,遷移金属による蛍光性イオンの消光が固液界面での脱励起過程の一つとして確認された。この素過程の理解は,近接場蛍光顕微測定から蛍光性イオンの吸着状態を評価する上で重要であり,その定量的評価を実施した.鉱物としてカオリナイトを,核種としてEu^<3+>を用いた時間分解型レーザ分光測定を行い,得られた結果に対して,マルチモード因子分析手法の一種であるPARAFACを適用することで,3つの異なる表面化学種の存在が明らかにし,その定量評価を実現した.この3つの化学種の内,低pH,低塩濃度領域でその寄与が大きくなる化学種は外圏型の表面錯体に対応すると考えられた.さらに,この化学種を対象としたH_2O/D_2O混合系における蛍光寿命測定から,表面極近傍において,外圏型吸着したEu^<3+>周囲の水分子のOH振動を介した脱励起過程の程度はバルク溶液中の水和イオンの場合と変わらず,それに付加的に表面への直接的な脱励起過程(~1msec^<-1>)が存在することが分かった.さらに,高pH,高Eu^<3+>濃度領域に存在する多核のEu^<3+>表面化学種では,Eu^<3+>-Eu^<3+>間のエネルギー移動によって,消光が引き起こされることが明らかになった.
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