研究課題/領域番号 |
20246139
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
関口 哲弘 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (20373235)
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研究分担者 |
馬場 祐治 独立行政法人 日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (90360403)
下山 巖 独立行政法人 日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究職 (10425572)
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キーワード | 光電子顕微鏡 / 放射光 / 有機半導体 / 有機薄膜 / 直線偏光 / ナノ材料 / X線吸収測定 |
研究概要 |
平成21年度交付申請書の研究目的・実施計画に基づき、ナノメートル領域の分子配向を測定することを可能とする実験装置の製作を終え、更に装置の立上を通して明らかとなったいくつか問題について改善を行い、平行して装置の調整作業を進めた。具体的には、赤外熱除去フィルターミラーの導入、試料導入部の補助排気の導入と装置全体の真空度向上化、および直線偏光素子による真空紫外偏光光源の導入を行った。光電子顕微鏡観察のために紫外光源を試料に照射すると、含まれている熱線である赤外光成分によって試料温度が約100℃も上昇してしまい真空中においては有機薄膜試料が簡単に蒸発してしまうという問題が起こっていた。この問題を防ぐために、赤外成分のみをカットするミラー光学系を設計・製作し、光源光路中に導入した。本研究課題の中心的役割を担っている直線偏光光源の開発を行った。これまで使用していた高圧水銀灯光源は扱いは容易であったが、光子エネルギーが4.9eVと低いため、有機薄膜材料をイオン化し光電子放出させ光電子顕微鏡観測するには不十分であった。そのため、真空紫外光源として重水素アーク放電灯を使った光源を設計開発した。これを実現するため真空紫外光源と測定真空容器を全て高真空で接続し、MgF2材料の窓やレンズ系により真空紫外光を導く光学系を開発した。光路の途中には直線偏光へ変換する光学素子が置かれており、光源の直線偏光の角度を360度回転することができる。 行った研究としては、配向グラファイト基板表面上に有機半導体分子であるCl元素を含むSi金属・フタロシアニン分子のマイクロパターン薄膜試料を分子蒸着法により作製した。Si,Cl-K殻におけるX線吸収端微細構造スペクトルの直線偏光角度依存性を測定できた。結果は顕著な角度依存性を示した。実験結果を定量的に解釈するためにX線吸収による高励起状態における電子状態理論計算を独自に行い、フタロシアニン分子の配向角度を決定した。得られた成果として、大きな有機半導体分子のX線励起スペクトルを定量的に解釈するために等価殻近似モデルによる分子軌道理論計算を導入することが有機半導体材料開発において非常に有効であることが示された。
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