生物の生命維持には、ゲノム情報が安定に保持・増殖されなければならない。ゲノム複製・分配のような基本的な生体反応に狂いが生じると染色体の異数化、がん化など細胞に対する悪影響が生じる。したがって、ゲノム複製や分配の正確な分子機構を解明することは、遺伝学における本質的な課題の一つである。本研究では、ゲノム分配を司るセントロメアに焦点を当て、セントロメア機能を解明することで、ゲノム分配の制御機構を理解することを目指している。特に、まだ未同定のセントロメアタンパク質を見いだして、その機能解析を行うことは、ゲノム分配機構を理解するために重要な研究である。2008年度には、新規セントロメア因子を同定することを目的として、既存のセントロメアタンパク質CENP-Tと結合するタンパク質の生化学的同定を試みた。その結果、細胞周期を通じてCENP-Tと結合するCENP-Wタンパク質を同定できた。さらに、CENP-WがCENP-Tと複合体を形成してセントロメアDNAへ直接結合することを見いだした。また、いくつかのセントロメアタンパク質をin vitroで発現させ、試験管内で再構成させることにも成功している。再構成タンパク質を用いた機能解析は、今後の重要な課題である。さらに、セントロメア複合体を形成するCENP-Uの機能解析についてノックアウトマウスを用いて行うことを計画した。ノックアウトマウスは作成できて詳しい表現型の解析を現在進めている。
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