研究概要 |
生物の生命維持には、ゲノム情報が安定に保持・増殖されなければならない。ゲノム複製・分配のような基本的な生体反応に狂いが生じると染色体の異数化、がん化など細胞に対する悪影響が生じる。したがって、ゲノム複製や分配の正確な分子機構を解明することは、遺伝学における本質的な課題の一つである。本研究では、ゲノム分配を司るセントロメアに焦点を当て、セントロメア機能を解明することで、ゲノム分配の制御機構を理解することを目指す。本年度は以下の2課題について研究を行い、成果を挙げた。 1)新規セントロメア因子の同定および機能解析 本計画では、既知のセントロメアタンパク質にタグを付加したものを発現する細胞を作成し、抗タグ抗体を用いた精製により新たなセントロメアタンパク質の同定を目指した。昨年度までの研究では、CENP-Tと結合する新規因子CENP-Wを同定した。今年度は、CENP-Tと同様CENP-Hとは弱く相互作用しているCENP-Sを対象とした精製を行った。その結果、CENP-S結合タンパク質として新規タンパク質CENP-Xが同定でき、ノックアウト細胞を作成して機能解析研究を行った。 2)キネトコアタンパク質複合体のin vitro再構成 我々は、これまで20種類以上のセントロメア構成タンパク質を同定して、それらの機能を、遺伝学を活用した細胞生物学的手法で解析してきた。ある程度の機能分担が細胞レベルで理解できた後は、タンパク質のin vitroでの再構成が必要となると考えられる。そこでin vitroの再構成実験に取り組み、CENP-O,-P,-Q,-R,-Uという5種類のタンパク質を大腸菌内に同時に発現させ、複合体としての精製に成功した。また、CENP-T/W複合体、CENP-S/X複合体の再構成にも成功した。
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