研究課題
赤潮原因藻ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ株と同種を宿主とするプラス鎖RNAウイルスHcRNAV株の間で感染交差試験を行い、ウイルス複製の指標となるマイナス鎖の合成の有無、異常核保持細胞率の変化、増殖阻害の有無について測定した。その結果、ウイルス株によって宿主範囲は大きく異なり、これはウイルス株間でのカプシドタンパク質立体構造の差異を反映しているものと推察された。とくに、これまでにウイルス感受性という点で大きく異なると考えられてきたUA型およびCY型のヘテロカプサ株に対し、両方に感染するウイルス株(HcRNAV659)が発見された点は予想外であった。HcRNAV659のカプシドタンパク質は、UA型特異的な感染を示すウイルス株HcRNAV34とわずか7残基のアミノ酸が異なっているのみであり、今後、ウイルスの多様陛拡大の戦略を調べるための好材料になるものと考えられた。また、HcRNAVのコートタンパク質遺伝子をpET・pCold・pGEX等のベクターに組み込み大腸菌細胞内に導入することで形質転換系での発現を試みたが、目的タンパク質の産生は検出されなかった。そこで、コートタンパク質遺伝子に高頻度(約15%)で含まれるすべてのレアコドンを発現に適したコドンヘ置換した遺伝子を全合成し、pCold-GSTベクターに組み込んだところ、最終的にコートタンパク質の発現に成功した。発現タンパク質は不溶性画分に得られたが、リフォールディングおよびGSTの除去により可溶化することができた。この結果は、渦鞭毛藻と大腸菌のtRNA分子の割合の顕著な差を反映したものと考えられた。このブレークスルーにより、来年度のHcRNAV特異的抗体の作製の目途が立った。
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http://feis.fra.affrc.go.jp/HABD/HACS/index.html