研究課題
本年度は、赤潮原因藻ヘテロカプサ,サーキュラリスカーマとこれに感染するプラス鎖RNAウイルスHcRNAVを材料とし、主にウイルス側の変異の様態について精査した。昨年度、大腸菌による発現系が構築されたHcRNAVコートタンパク質を自己凝集させ、透過型電子顕微鏡観察を行った結果、天然由来のHcRNAV粒子と形態学的にきわめて類似した粒子(粒径約30nmの球形ウイルス様粒子)の形成が確認された。この発現タンパク質に反応する十分な力価を持ったウサギ抗血清の作製に成功し、今後のレセプター探索に用いることとした。このコートタンパク質のN末端領域には、塩基性残基に富む領域(22~47残基)が存在し、in vivoでRNAと相互作用することが予想された。そこで、典型的なウイルス構造モチーフ(ジェリーロール)を維持させた状態で、N末端領域を段階的に削除した変異タンパク質の発現を試みた。その結果、いずれもGSTとの融合(不溶性)タンパク質として発現させることができたが、明らかなウイルス様粒子の形成は観察できなかった。現在、全配列を用いた発現コートタンパク質の大量精製を行い、結晶化試験およびX線構造解析試験の準備を行っている。また、過去の研究において、HcRNAVは相補的な株特異性を持つUA型およびCY型の2グループからなると考えられてきたが、日本各地から集めた様々なウイルス株対宿主株間でのクロスアッセイの結果、より詳細にはUA型はその株特異性から3群以上に群別されることが再確認された。さらに系統学的解析の結果、各群のコートタンパク質のアミノ酸配列は、UA型の大きなクラスターの中で微妙に異なるクレードに分かれることが示された。これらの結果から、現場環境中のヘテロカプサとウイルスの関係の複雑性が改めて示された。
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