研究課題/領域番号 |
20247002
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研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
長崎 慶三 独立行政法人水産総合研究センター, 瀬戸内海区水産研究所, 主幹研究員 (00222175)
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研究分担者 |
外丸 裕司 独立行政法人水産総合研究センター, 研究員 (10416042)
福山 恵一 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80032283)
和田 啓 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教 (80379304)
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キーワード | RNAウイルス / 渦鞭毛藻 / 宿主特異性 / レアコドン / カプシドタンパク質 / タンパク質発現系 / 共進化 / ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ |
研究概要 |
本年度は主に、赤潮原因藻ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマに感染するプラス鎖RNAウイルスHcRNAVの構造解析、ウイルスカプシドタンパク質の多様性の検討、ならびに最終年度にあたっての考察に取り組んだ。クライオ電顕による画像解析の結果、ウイルス粒径は34mmでありT=3の対称性をもつこと、ならびにカプシドは180分子のHcRNAV-ORF2産物が水素結合的に集合して構成されているものの、従来知られているRNAウイルスとはその配置ならびに隆起様態が大きく異なると推察された。硫安塩析およびゲル濾過により精製したウイルス粒子の結晶化に最適な条件は、0.2%PEG4000,0.1M酢酸ナトリウム,0.1M塩化マグネシウム(pH4.5)であった。得られた結晶を回析X線測定に供した結果、約20オングストロームの分解能までのスポットが得られた。さらにPEG沈殿およびクロロホルム三層分配により精製度を高めたところ、分解能は約6オングストロームまで改善した。カプシド表面の微細構造から宿主株識別機構の比較解析を行うには、この2倍程度の分解能が求められるものと思われる。2009年に始めてヘテロカプサが検出された佐渡島加茂湖で新たに採取したウイルス株を含めたカプシドタンパク質アミノ酸配列に基づく系統解析の結果、HcRNAVはUA型とCY型に大別されるものの、前者がUA-1およびUA-2の2つのサブクラスに群別されることが明らかとなった。ヘテロカプサとHcRNAVは、種内で大きく分化した複数のグループがそれぞれ優占しているが、それらの変異はおそらく連続であり、さらに天然海水中における各宿主タイプの存在様態を反映した量的質的変化と共進化を繰り広げながら、共存し続けているものと推察された。
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