研究課題
基盤研究(A)
多細胞生物の組織構築は、細胞間の密なコミュニケーションを通して初めて可能になると考えられる。近年のシロイヌナズナ分子遺伝学を用いた解析から、植物の組織構築においても複雑な細胞間コミュニケーションネットワークが必要であることが分かってきた。しかし、細胞間コミュニケーションシステムの分子実体が示された例は極めて少ない。維管束は師部、前形成層・形成層、木部からなる組織で、動物の血管、神経系同様、栄養と情報を伝達する組織として重要である。私たちは、これまで木部細胞分化をin vitro培養系及びシロイヌナズナ・イネの突然変異体を用いて解析してきた。そして、細胞外因子により、木部道管細胞分化が促進されたり抑制されたりすることを、世界に先駆けて明らかにしてきた。その過程で、師部が維管束組織構築のシグナルの受け手としても発信地としても機能していることを見出した。このような状況の下、私たちは師部を中心にしたシグナル伝達系を明らかにすることで、師部とそのまわりの細胞との細胞間相互作用、ひいては植物の組織構築における細胞間相互作用の基本的原理を明らかにしようと考えた。本研究は、3つの方向性をもって進められた。1つは私たちが2006年に単離同定した小ペプチドTDIFが師部で合成され分泌されるという事実をもとに、師部の維管束分化における役割を明らかにしようというものである。2つめは、私たちが同定した、イネの横走維管束形成に関与し、師部で発現するレセプターキナーゼCOE1の機能解析を進めることで、師部のシグナルセンター機能を解析しようとするものである。3つめは、これらとはまったく異なる新たな挑戦的な方法で師部関連因子を同定しようというものであり、ここには、師部分化系の開発、師部分化関連転写因子の網羅的同定などが含まれた。すべてがうまくいったわけではないが、3方向からのアプローチにより、師部のシグナルセンターとしての働きが明確に示された。特に、師部が幹細胞維持のためのニッチ細胞として働くという発見は、今後の植物の分裂組織構築研究の展開上極めて重要であると考える。
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