研究課題
脊椎動物における卵巣分化の制御メカニズムに関する研究は、哺乳類ではまだ遅れており、魚類を対象とした研究が進んでいる。研究代表者の長濱らは、芳香化酵素阻害剤を用いてエストロゲン合成を抑制させたティラピアの生殖腺形成を詳しく解析することにより、魚類の卵巣分化にエストロゲン(エストラジオール-17β)が不可欠であることを明らかにしてきた。本研究では、魚類(メダカとティラピア)卵巣分化時における性ホルモンによる卵巣形成の分子メカニズム、特に生殖細胞の増殖(mitosis)と減数分裂(meiosis)開始の分子メカニズムを明らかにすることを目指す。平成20年度は性分化期生殖腺の3種のエストロゲン受容体およびステロイド代謝酵素チトクロームP450c17の発現細胞を解析するとともに、卵巣分化に果すR-spondinlの役割を遺伝子ノックダウン法と過剰発現法により調べた。R-spondinlのノックアウトXX個体では孵化後40日には活発に精子形成を行っている精巣が観察された。この精巣では精巣体細胞(セルトリ細胞)に特異的に発現するgsdf遺伝子の強い発現が認められた。一方、R-spondinlを過剰発現されたXY個体では孵化後20日には卵母細胞を有する卵巣が形成された。これらのLoss-of-functionとGain-of-functionの実験結果より、メダカにおいてR-spondinlが卵巣分化に不可欠であることがはじめて明らかになった。今後、R-spondinlとエストロゲンとの関連を解析する心要がある。またこの研究の過程で、RNAi法を用いた遺伝子ノックダウン法を新しく開発した。この方法を用いることで、メダカで長期間にわたる遺伝子ノックダウンの影響を解析することがはじめて可能になった。
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Biochem. Biophys. Res. Comm. 380
ページ: 115-121