研究課題
脊椎動物における卵巣分化の制御メカニズムに関する研究は、哺乳類ではまだ遅れており、魚類を対象とした研究が進んでいる。研究代表者の長濱らは、芳香化酵素阻害剤を用いてエストロゲン合成を抑制させたティラピアの生殖腺形成を詳しく解析することにより、魚類の卵巣分化にエストロゲン(エストラジオール-17β、E2)が不可欠であることを明らかにしてきた。本研究では、魚類(メダカとティラピア)卵巣分化時における性ホルモンによる卵巣形成の分子メカニズムを明らかにすることを目指す。昨年度までの本研究から、メダカではエストロゲン受容体(ERβ2)とRspoが卵巣分化に不可欠であることがわかったが、本年度はメダカにおけるERβ2の発現とエストロゲンとの関係、及びティラピアを用いた器官培養系でエストロゲンの卵巣分化に果す直接的役割について解析を進めた。その結果、遺伝的雄(XY)メダカを受精直後から6、7、8日間にわたってE2で処理するとERβ2の発現が遺伝的雌魚と同じレベルまでに上昇することから、ERβ2の卵巣分化に果す重要な役割が確認された。今後、メダカの卵巣分化に果すERβ2の機能、特にRspoとの関係についてさらに検討する必要がある。一方、ティラピアを用いた器官培養系(本年度は、これまでの浮遊培養系に加えて、新たに旋回培養系を開発した)では、1)エストロゲンの直接的影響で卵巣腔が形成されること、2)生体外に取り出した卵巣片での卵巣型芳香化酵素遺伝子及びタンパク質の発現が培養中にE2を添加することによって維持されること、さらに、3)卵巣形成後にみられるステロイド産生細胞の卵胞周辺域への移動がE2によって促進されること、をはじめて見出した。なお、卵巣腔形成に果すエストロゲンの役割はE2のin vivo処理によっても確認されたが、この場合には内因性の卵巣型芳香化酵素遺伝子及びタンパク質の発現が完全に抑制されたことから(従って、内因性のエストロゲンの生成は無い)、投与された外因性のE2が直接的に卵巣腔形成に作用していることが明らかになった。
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