研究課題
脊椎動物における卵巣分化の制御メカニズムに関する研究は、魚類を対象とした研究が進んでいる。研究代表者の長濱らは、魚類の卵巣分化にエストロゲン(エストラジオール-17β、E2)が不可欠であることを明らかにしてきた。本研究では、魚類(メダカとティラピア)卵巣分化時における性ホルモンによる卵巣形成の分子メカニズムを明らかにすることを目指す。昨年度までの本研究から、メダカではエストロゲン受容体(ERβ2)とRspo1が卵巣分化に不可欠であることがわかったが、本年度はさらにERβ2の機能についてメダカのLoss-of-Function (LOF, RNAiとTilling)系統を駆使して解析した。ERβ2のLOFによりSDF1/CXCR4で誘導される始原生殖細胞(PGC)の生殖腺への移動が異常となり、その結果として生殖腺中の生殖細胞の数が減少すうことがわかった。この系統の受精卵にSDF1とCXCR4を過剰発現させると、PGCの生殖腺への移動は正常となった。一方、発生が進んだERβ2のLOF系統では、Rspo1シグナリングが抑制されること、さらには生殖細胞を囲む体細胞でのGSDF1の発現が誘導されることにより遺伝的XX個体の雄型生殖腺への転換が起こった。このことは、Rspo1遺伝子をノックダウンされた個体へのERβ2の過剰発現によりXX生殖細胞が正常に減数分裂を開始したことにより確認された。さらに、ERβ1の機能についても同様な実験方法を用いて解析した。その結果、ERβ1の発現はメダカXXでは卵巣腔に見られた。XXメダカのERβ1のLOF系統では、BMP2b/4シグナリングが異常となり、卵巣腔の形成が抑制され、その結果として正常な卵の放出が起こらないことが明らかになった。これらの結果により、ERβ1は卵巣腔の形成に深く関わっていることが示唆された。本研究から、メダカのXX個体では卵巣の分化にE2/ERβ2が、卵巣腔の形成にE2/ERβ1系が重要な役割を果たしていると考えられた。
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