1)中国・深〓で野外調査し、Osmunda angustifolia、O.vachelliiを採集した。 2)ゼンマイ亜属3種について複数の核遺伝子領域と葉緑体遺伝子を用いて系統解析を行なった。それらの遺伝子を個別にあるいは結合して解析した結果、ゼンマイとレガリスゼンマイが分化した後で、東アジアのゼンマイと、現在は東アジアには分布しないレガリスゼンマイの新大陸亜系統の間で浸透性交雑が起ったことが示唆された。 3)オオバヤシャゼンマイの生態調査と系統解析及び集団遺伝学的解析から、本シダが雑種2代や戻し交配を含む部分的に胞子繁殖する複合雑種であり、その母種であるゼンマイとヤシャゼンマイの間で浸透性交雑が起っていることが示唆された。 4)ラオスとミャンマーに新種Osmunda hybridaが存在することを明らかにした。葉緑体遺伝子・核遺伝子解析などの結果を総合すると、本新種は、インドのレガリスゼンマイを母親とし、ゼンマイを父親とする複2倍体であると推定された。過去に分布域が重複あるいは近接していた時に、種間雑種と倍数化が起ったと示唆された。 5)香港と中国東南部に分布する亜属間雑種Osmunda mildeiの母種を推定するために、複数の核遺伝子領域と葉緑体遺伝子を用いて系統解析を行なった。得られたデータから、本雑種はゼンマイ(ゼンマイ亜属)を父種、Osmunda vachelliiを母種として生まれたことを明らかにした。 6)現生種と化石種の詳細な形態比較を行ない、日本の化石種は葉脈間距離がゼンマイよりもレガリスゼンマイ(現在は東アジアに分布しない)に似ていることを突き止め、過去にレガリスゼンマイ(あるいはその祖先種)が日本を含む東アジアに存在していた可能性を示唆した。
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