研究概要 |
本研究は,ヒドロゲナーゼ成熟化因子Hypタンパク質の結晶構造解析を行い,その成熟化過程を構造生物学的に解明することを目的としている.HypFについては,前年度までに得られた結晶化条件の改善を進め,針状結晶と六角板状結晶が得られ,放射光による回折実験の結果,後者については5A分解能を超える回折が確認でき,六方晶系に属することが明らかになった.HypBホモログについては,斜方晶系に属する結晶が得られ,2.1A分解能での構造解析に成功し,ホモダイマー構造を取ることが明らかになり,精密化を進めている.ゲルろ過カラムクロマトグラフィーを用いて,HypAおよびHypCと[NiFe]ヒドロゲナーゼ大サブユニットとの相互作用を解析し,ヒドロゲナーゼ大サブユニットはHypAと強く結合する一方,HypCとは弱くしか結合しないことが示唆された.また,前年度構造決定に成功したHypC-HypD複合体に加えて,本年度はHypC-HypD-HypEの三者複合体の構造解析を行い,2.3A分解能での結晶構造を決定した。HypC-HypD-HypE複合体においては,HypEダイマーの各側面にHypC-HypD複合体が結合していることがわかった.変異体解析の結果,HypEの保存された疎水性残基が三者複合体形成の留め具として重要な役割を果たしていることも明らかになった.シアノ基転位に関わるHypEのC末端領域は,HypCとHypDで形成されるFe結合部位の付近に位置しており,Cys残基間の酸化還元によってFe原子のシアノ化が起こる反応機構が,強く示唆されるものであった.
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