本研究の最終的な目的は、遺伝学的手法と構造生物学を組み合わせて(=構造遺伝学)、真核生物の繊毛・鞭毛の中で多数のダイニンが協調して運動をする仕組みを理解することである。平成21年度は9月に京都大学から東京大学への移転をし、新しい研究室の整備をしながら、上記の目的の為の基礎技術を幾つか確立し、結果が得られつつある。 昨年から行っているダイニン分子の構造的な標識はATPにビオチン標識を入れることで、頭部の回転が少ないことが観察されつつある。また、ダイニンの微小管結合部位であるストークと微小管の複合体のクライオ電子顕微鏡による高解像度解析が進みつつあり、現在10オングストロームを超える構造が得られつつある。これによって、ダイニンが微小管に結合したり離れたりするスイッチングの仕組みが解明されることが期待される。 また、鞭毛の動きを評価するために、三次元トラッキング顕微鏡の開発を始めており、現在最大2分程度の間、一つのクラミドモナス細胞を追いかけながら鞭毛の動きを観察することに成功している。これによって、この場合にはクラミドモナスの2本の鞭毛が同調したり非同調したりする仕組みを解析する事が可能になるだろう。
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