研究課題/領域番号 |
20247020
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
伊藤 維昭 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (90027334)
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キーワード | 翻訳制御 / リボソーム / SecM / 翻訳伸長停止配列 |
研究概要 |
新たに開発した細胞内の合成途上ポリペプチド鎖(ナッセントーム)を特異的に検出する電気泳動法を用いて、タンパク質合成の新しい情報を得た。プロテオームのメンバー全てが合成途上状態を経験するため、ナッセントームは莫大な分子種を含み、そのほとんどが一瞬の間のみ存在する。それらの動的な全体像をパルスチェイス実験で観察し、大腸菌細胞が20℃、37℃で増殖するときのポリペプチド鎖伸長の様子を比較した。また、単一のプロテオームメンバーそれぞれの特異的な合成途上鎖を観察するため、それらのN末端に付加されたHis6を利用した変性条件下のアフィニティー単離を行った.その結果、いくつかのタンパク質において翻訳のpausingが起こっていることがわかった。また、終止コドンを欠く異常mRNA(non-stop mRNA)が生じると、翻訳複合体(mRNA-リボソーム-polyptidyl-tRNA)が末端で立ち往生する。細胞にはこのようなリボソームを救出するシステムが備わっており、大腸菌ではtmRNAが関与するtrans-translationがリボソーム救出因子と考えられていた。最近新たな因子ArfAがリボソーム大サブユニットに結合してpeptidyl-tRNAの加水分解を誘導し、tmRNAとともにリボソーム救援機構を構成していることが報告された。これまで、リボソーム救援機構はnon-stopmRNAが生じるようなモデルコンストラクションを使って調べられたものであり、染色体由来の本来の遺伝子からどの程度non-stop mRNAが生じているのかはわかっていなかった。今回ナッセントーム解析により、これらの救援機構が両方欠損するとpolypeptidyl-tRNAの数パーセントが安定に存続することが明らかになり、大腸菌が予想以上に高頻度に「空回りタンパク質合成」を行っていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
合成途上鎖の挙動を具体的に追求できる実験系を構築できた。
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今後の研究の推進方策 |
合成途上鎖の挙動を具体的に追求できる実験系を構築できたので、今後はデータ収集を精力的に行う段階になった。このためには人的資源が必要とされることが重要な問題点として存在する。
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