上皮間充織形質転換(EMT)は外胚葉性由来細胞が中胚葉(間充織)細胞的形質を獲得し、運動性を獲得する過程である。EMTでは、E-カドヘリンが不活化しendocytosisされる。一方、ある種のインテグリンが活性化され、細胞は基質上を運動できるようになる。EMTにおいては運動性を獲得するのみならず、しばしば、細胞外基質に対して高い浸潤性を示す。癌の悪性度の本体は浸潤転移性の獲得であるが、この過程はEMTと類似点が多い。 これまで、様々な乳癌細胞株において、それらの浸潤活性にArf6の異常発現と活性化が重要な役割をなしていることを報告してきた。一方、正常乳腺上皮細胞NMuMGはTGF beta 1刺激によりEMTをおこす。既に、NMuMG細胞をsubcloningする事により、EMTにおいて浸潤性を示すものと、殆ど示さないものとを分離している。本年度はまず、NMuMG亜株を用い、EMTにおけるE-カドヘリンの不活化の分子機構の解析を行った。その結果、Arf6の活性が如何にしてE-カドヘリンの不活化しendocytosisを引き起すのかの大筋を明らかにした。現在、論文に纏めるべく詳細を詰めている。運動性獲得と浸潤性獲得との関連性は今後の問題である。
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