EMT進行に伴う浸潤性獲得機序の解明のため、NMuMG細胞を用いたTGFβ1によるEMT誘導過程の解析を行って来た。前年度までにTGFβ1によりArf6が活性化すること、活性化したArf6はAMAP1をエフェクターとする事、AMAP1はEPB41L5に結合し、E-cadherinのendocytosisを引き起こす事を観察していた。この研究費とは別途に行っている研究において、Arf6はGEP100により活性化される事、GEP100はEGFR等チロシンリン酸化酵素型受容体により活性化される事を報告している。TGFβ1受容体はセリン/スレオニンリン酸化酵素型受容体である。今年度は、TGFβ1によるGEP100活性化の分子機構の解析を行った。その結果、TGFβ1によってチロシンリン酸化酵素型受容体であるc-Metが活性化されること、活性化されたc-MetにGEP100が結合していることを見いだした。この結合は直接ではなく、Gab1とよばれるadaptorが介在した。現在、TGFβ1によるc-Metの活性化機構を解析している。この解析は当初予想では、比較的単純に思えたが、思いのほか難航している。文献上ではNMuMG細胞は正常上皮細胞であるとの既述であったが、現在の考え方からすれば、TGFβ1単独処理によりEMTが進行する事等、何らかのゲノム変異をすでに持っている可能性が考えられる。このような点も含め詳細を検討中である。
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