研究概要 |
本研究では、(a)順遺伝学からの左右軸形成機構へのアプローチ、(b)ユニークなメダカDa変異体を用いた胚、成体の背腹パターン形成を制御するメカニズムの解明、の2点に絞った研究を実施した。 (a)に関しては、左右軸変異体abcとktuの原因遺伝子がコードするタンパク質に関連する解析を行った。AbcはPKD1l1のメダカ相同タンパク質であることが判明した(Kamura et al., 2011)。ドメイン解析の結果、細胞外の特定の部位が機能に重要であることが判明した。そのドメインを用いて、yeast two hybrid法によって、結合するタンパク質を複数同定した。そのタンパク質との相互作用の解析を進めている。一方、Ktuは類似タンパク質(PIH1D1,PIH1D2,Twester:PIHファイミリー)が軸糸ダイニン形成の別々のstepに寄与するという実験結果を得た。このファミリーのタンパク質の軸糸ダイニン形成への役割の全体像が明らかになりつつある。 (b)に関しては、(1)Da変異体を用いてzic遺伝子を中心としたネットワークを明らかにした。即ち、マイクロアレイ解析および詳細な発現解析により、Zic1/Zic4の下流遺伝子としてfhl2a、lfng、slitlaを同定した。Zic1/Zic4が体節背側におけるNotchシグナルの活性化およびrobola発現細胞の移動という2つの経路を介して背側形態を制御することが示唆された。(2)さらに、Da変異体の尾部形態に着目した解析より、zic遺伝子が尾部の形態進化に深く関与していることが判明した。即ち、zic遺伝子の尾部背側での発現の獲得が硬骨魚類の祖先で起こり、硬骨魚類を特徴づける正型尾(尾端が背側に歪曲した尾鰭)を生み出し、硬骨魚類の水圏での繁栄につながったことが示された(Moriyama et al, 2012)。
|