研究課題
北ケニア、ナチョラのBG-K化石サイトから発掘した中期中新世の大型類人猿、ナチョラピテクスの化石標本が膨大な数にのぼることから、これらをクリーニング、整理、分析、記載等、また地質分析を行い、この化石種の性差、成長、形態、生態、社会、系統、進化などの生物学的側面を明らかにしつつ、現生の類人猿とヒトとの共通祖先モデルの構築を目指した。中期中新世の初頭のケニアに生息したナチョラピテクスは、河辺林をともなうウッドランドに生息したことが哺乳動物相からうかがえ、臼歯列の形状からもその食性は乾いた疎開林の堅果類を重要な食物としていたことと推定される。成獣の体重は中程度のサイズの類人猿であり、現生のヒヒ類に相当する。幼児の頭蓋骨化石からは、その脳はチンパンジーにはおよばないがサル類のサイズをはるかに凌ぐものであり、成獣の脳も比較的大きいものと考えられる。四肢骨から見た運動様式はあまり敏捷ではない樹上四足歩行者であり、手足の把握性は強く発達し、手根骨を含めた上肢骨の形態からも現生類人猿の水準には達していないものの、その懸垂的な動作は比較的発達していたものと推定される。系統的には前期中新世のプロコンスル類に比べ、突顎性の弱化、堅果類への適応を示す歯牙形態、側頭骨岩様部の弓下窩の消失、環椎や軸椎に見られる形態などは現生大型類人猿への類似を示し、前期中新世類人猿から後期中新世の類人猿への移行的中間形を示している。以上のことから類人猿・人類の共通モデルとしては、ボノボ程度の体格で、比較的性差が大きく、群れ型社会、堅果食性の非敏捷型樹上四足登攀タイプ運動様式を示す非特殊化類人猿が推定された。
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