研究概要 |
本年度は,ラッカセイのフィチン吸収機構の解析手法について検討するとともに,フィチン吸収能の品種間差異と回収リンの再利用に関しての試験を実施した.結果の概要は以下の通りである. 1.X線マイクロアナライザーで水耕栽培した作物根の横断面のリン含有率を測定したところ,リン無施肥状態で乾物重換算で0.5%程度のリン含有率が,リン施用後半日以内に1%以上に増加することが確認でき,次年度にこの方法でフィチン施用後の根のリン吸収を測定できる見通しが立った.トルイジンブルー染色によるフィチン蓄積部位の判定も試みたが,根細胞内のフィチン以外の組成によっても同様の発色を呈することがあり,判定は困難であった. 2.導入したCE/MS装置で各種イノシトールリン酸の最適な分析条件を探索した.その結果,汎用性のあるフユーズドシリカキャピラリーを用いても,m/zからイノシトール6リン酸に相当する物質を検出することができたが,その検出感度はそれほど高くなかった.これは,イノシトールリン酸の錯形成能が高く,キャピラリー内壁との相互作用が大きいためと思われた.そこで,キャピラリー内部をPVAでコーティングしたコーティングキャピラリーを用いて分析したところ,検出感度が顕著に改善された.今後は,未知試料内の濃度に応じて、両キャピラリーを使い分けて分析する予定である. 3.ラッカセイのフィチン吸収能は,スパニッシュタイプチコとバージニアタイプ千葉半立のいずれでも認められた.アーバスキュラー菌根菌の接種によるリン吸収の向上は本実験条件下では確認できなかった.また,圃場栽培した千葉半立の収穫後茎葉部を緑肥としてすき込んだ後に生育させたコムギ農林61号のリン吸収は,非すき込み区に比べて増大したが,その効果はラッカセイへの窒素施肥量によって変化した.
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