| 研究概要 |
バラ科サクラ属果樹の多くは配偶体型自家不和合性を示し,このことが栽培や育種を行う上での大きな障壁となっている.本研究では,サクラ属果樹における自家不和合性反応の分子機構を解明し,得られた知見を園芸・育種学的に利用しようとして研究を進めている.本年度は以下の研究を行った.
(1)SFBとSCF複合体を形成するタンパク質のクローニングおよび解析:昨年度までの研究でクローニングしたSFBと共にSCF複合体を形成すると考えられるskp1およびcullinの解析をさらに進めるために,クローニングした遺伝子配列を利用して,skp1およびcullinの組み換えタンパク質を作製し,共免疫沈降法およびプルダウンアッセイによりSFB,skp1,cullinの相互作用について検討した.
(2)オウトウおよびアンズにおける共通因子の解析:同じSハプロタイプを示すにも関わらず不和合性形質を異にするアンズの品種群のS遺伝子を単離した.また共通因子の変異により自家和合化していることが知られている甘果オウトウ品種クリストバリーナの共通因子を単離するためのSSRマーカーのスクリーニングを行った.
(3)S-RNaseと相互作用するタンパク質の探索:yeast two hybrid法によりS-RNaseと相互作用する花粉タンパク質のスクリーニングを行った.
(4)効率的な形質転換系の確率:ウメとアンズを用いて形質転換の効率を高める方法を検討し,ウメでこれまでに用いてきた方法が,アンズにも適用できることを明らかにした.
(5)受粉後に発現する遺伝子の網羅的解析:不受粉および不和合性,和合性受粉を行った雌ずいよりmRNAを抽出して,次世代シークエンサを用いた網羅的解析を行った.
|
