研究課題
本年度は、トウガン篩管滲出液から新規耐虫性タンパク質の精製と遺伝子のクローニングに成功した。ウリ属の滲出液(篩管液)とくにトウガンBenincasa hispidaの滲出液は顕著な耐虫性(成長阻害活性)を示した。トウガンの葉はエリサンに対して強い毒性・成長阻害活性を示したが、細切り水洗し篩管液が滲出しなくなった葉は毒性が顕著に弱くなる一方、篩管滲出液を人工飼料に加えてエリサンに摂食させると顕著な成長阻害が観察された。そこで、トウガン篩管液に含まれる耐虫活性因子の精製を試み、篩管液を陰イオン交換カラムに供したところ、非吸着画分および複数の吸着ピークにそれぞれ活性が認められ、本因子は複数の成分で構成されていた。陰イオン交換カラムの非吸着画分に含まれる活性成分を、各種クロマトグラフィーを用いて単離した。この成分はタンパク質であったため、一次構造を解析した。明らかになった一次構造はBlast検索の結果ウリ科の篩管液の凝固に関与するPPIIタンパク質(Phloem Protein II)に相同性を示す一方でPPIIではPPIと反応し凝固するに当たって必須なシステイン残基を1つも含まないなどPPIIとは顕著な相違点を持ち本耐虫性タンパク質が新規タンパクであることを示した。陰イオン交換カラムの吸着ピークに含まれる活性因子に関しても、そのうちの1つを単離した。この成分はSDS-PAGEの結果から約32000程度の分子量と見積もられた。オオバイヌビワ(Ficus septica)の乳液が耐虫性分として毒性の強いPhenanthroindolizidine alkaloid (PIA)を複数種高濃度で含み昨年度はそのうちの1つがantofineであることを解明したが、今年度はもう一つのPIAの主成分がisotylocrebrineであることを解明した。クワ耐虫性タンパク質MLX56の耐虫性メカニズムがタンパク質等の栄養素の消化(分解・吸収)過程を阻害することが根本原因になっているか調べるため、タンパク質を全く含まないセルロース人工飼料を作り、そこのMLX56を添加あるいは無添加でエリサンに摂食させ成長を比較したところ、MLX56はセルロース飼料摂食時でも顕著な成長阻害作用を示した。このことから、栄養素の消化吸収阻害はMLX56の耐虫性の根本原因ではないことが判明した。
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Phytochemistry (Special Issue on Plant-Insect Interactions)
巻: (オンライン上で掲載された(後に正式頁がつく)) ページ: doi:10.1016/j.phytochem.2011.02.016 21
Biophilia
巻: 6巻 ページ: 51-58