研究課題
トウガン篩管液由来耐虫性タンパク質(BPLPと命名Benincasa hispida Phloem Lectin-1ike protein)の完全長cDNA(1076塩基)をクローニングし、遺伝子・タンパク質の詳細な解析を行った。BPLPは303残基のアミノ酸からなり、予測される分子量は34973.49DaはSDS-PAGEの結果から予測された35kDaとよく一致していていた。BPLPはウリ科植物篩管レクチン(PP2ウリ科篩管液の凝固反応に関与)と51%の相同性を示したが、BPLPはPP2と異なり、約150アミノ酸残基からなるほぼ相同な配列2つの繰り返し配列のみからなり、PP2では篩管液凝固機能に関与するシステイン残基を欠くためBPLPはPP2と異なる機能を持つことが示唆された。BPLPはウサギ赤血球に対し凝集効果を示し、その効果は低濃度のN-acetylglucosamine oligomerで阻害されたためPP2同様にキチン結合性レクチンの性質を持つことが判明した。BPLPは70μg/g(0.007%)の低濃度でエリサン1齢幼虫に対して有意な成長阻害活性を示し、105μg/gでは成長を完全に阻害した。また、カイコにおいても50μg/g(0.005%)で成長量を半分強まで減らした。0.005-0.01%濃度での成長阻害活性は植物由来の既知の耐虫性タンパク質と比べても極めて高く(植物のプロテーゼインヒビターや多くの植物レクチンでは効果発現に1%以上の濃度が必要)耐虫性作物の遺伝育種素材への利用可能性が高いためBPLPタンパク質・遺伝子の利用に関して特許(日本国内 今野浩太郎・太田英司「耐虫性タンパク質及び該耐虫性タンパク質をコードする耐虫遺伝子」(特願2011-177212))を申請した。クワ耐虫性タンパク質MLX56はキチン・囲食膜合成阻害剤の共存下で毒性が顕著に軽減されることが判明した。このことからMLX56は囲食膜を有害なものに変換し毒性を発現している可能性が示された。MLX56遺伝子をアグロインフィルトレーションの手法で導入し一過的に発現させたトマトおよびシロイヌナズナがハスモンヨトウ・コナガの成長をそれぞれ阻害し、MLX56の対中性育種への可能性が示された。アカメメイヌビワ乳液の耐虫活性が集中するアルカリ画分のH^1-NMR、C^<13>-NMRスペクトルとそれらの相関パターン(TOCSYとHSQC)から、この耐虫活性画分がphenannthoindolizidine alkaloid(PIA)類を主成分とすることが確認された。これまでの結果とあわせ、イチジク属植物は、乳液中耐虫成分としてシステインプロテアーゼを含むもの(ハマイヌビワ・ホソアムクインビワ、イチジク)と高濃度のPIAを含むもの(アカメイヌビワ、オオバイヌビワ)があることが確認された。
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Journal of Asia-Pacific Entomology
巻: 15 ページ: 397-400(2012)
DOI:10.1016/j.aspen.2012.01.009