研究概要 |
本研究では,実験的アプローチとフィールド実測を併用して,湿潤熱帯域における土壌有機物動態を記述する新たなモデル構築を目指す。平成20年度は広域調査によって採取された多様な土壌について土壌有機物の化学的・物理的分画および有機物無機化シミュレーションを行ったが,平成21年度は地域的に異なるストレス因子に対する土壌の応答に関する研究を行った。具体的には,1. 東北タイにおけるストレス因子に対する作物近傍の土壌微生物群集の応答解析や,2. 湿潤アジアの森林土壌におけるセルロース分解活性の定量的解析,3. リン酸の吸着と有機物蓄積に及ぼす鉱物学的影響に関する詳細な研究が行われた。これらの研究成果により,従来の土壌有機物動態モデルでは追跡できないストレス因子による土壌有機物動態の変化を追跡することができると考えられた。上記の知見に基づいた土壌有機物動態モデルの骨格を確定し,パラメーター群のデフォルト値を決定するため,平成20年度に設定された,タイ国コンケン市,インドネシア国東カリマンタン州,タンザニア国モロゴロ州,カメルーン国東部州の各地森林および耕地において,ひきつづき土壌採取と土壌・気象環境のモニタリングを行った。また,さらに温帯半乾燥地にモデル適用可能地域を拡大するため,カナダにおいて広域的な現地調査と試料採取を実施した。これらの土壌試料の分析およびデータの統合により,より適用地域が広く,様々なストレス因子への応答も追跡することのできる土壌有機物動態モデルの構築を目指す。
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