研究課題/領域番号 |
20248009
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
祥雲 弘文 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 名誉教授 (70012036)
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研究分担者 |
若木 高善 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (70175058)
伏信 進矢 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (00302589)
佐々木 康幸 東京農業大学, 応用生物科学部, 助教 (50398814)
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キーワード | 脱窒 / Fusarium oxysporum / 亜硝酸還元酵素 / nirK / フラボヘモグロビン / P450nor / 放線菌の硝酸呼吸 / 硝酸還元酵素 |
研究概要 |
昨年度までに、強力な脱窒真菌Fusarium oxysporumから、脱窒に関わる亜硝酸還元酵素の遺伝子(FonirK)の単離に成功し、それが細菌脱窒系のオルソログであることを明らかにした。今年度は、さらに、国菌とも称される重要な真核微生物である麹菌船Aspergillus oryzaeからも、nirK遺伝子(AonirK)の単離に成功した。AonirK遺伝子産物は顕著な亜硝酸還元活性を示し、分光学的解析によりタイプ1銅およびタイプ2銅の存在が示された。AonirK遺伝子は脱窒条件で転写量が増え、同遺伝子の高発現株は脱窒活性が6倍も上昇し、菌体増殖も上昇した。さらに、その遺伝子産物がミトコンドリアに局在することも示し、このオルガネラの起源と進化に関して新たな視点を提示した。 フラボヘモグロビン(Fhb)は真核および原核微生物に普遍的に見出される融合タンパク質であり、生理作用として一酸化窒素ジオキシゲナーゼ活性が知られている。我々は昨年度までにA.oryzaeより2種類のFhb遺伝子(fhb1,fhb2)の単離に成功し、その遺伝子産物の性質を詳細に調べた。今年度は、両fhb遺伝子と酸化ストレスの関係について調べた。両遺伝子の欠損株および高発現株の過酸化水素に対する耐性を調べた結果、両Fhbは過酸化水素に対する酸化ダメージを亢進することが明らかになった。また、FhblとFhb2はそれぞれ細胞質とミトコンドリアでの酸化ストレスに関わることが分かった。真核微生物のFhbの生理機能が、オルガネラのレベルで明らかにされたのは本研究が初めてである。さらに、2種類の放線菌から5種のFhbホモログの遺伝子を単離し、酵素活性測定、遺伝子発現解析、遺伝子破壊などの手法を通じてその生理的意義を検証した。昨年までに放線菌S.ceolicolorの3種のdNarパラログの発現解析や遺伝子破壊を行ったが、本年度はそれをさらに進めて、培養条件の検討を通じて亜硝酸生産に対する影響を検証し、総合的に、これらdNarと亜硝酸との関連、また本代謝系の意義を検討した。さらに、様々な嫌気条件下でのプロテオーム解析も行い、各条件での蛋白質の生産状態を検証した。 排水処理の過程で強力な温室効果ガスである亜酸化窒素(N20)の発生することはよく知られている。その主な原因の一つが、硝化細菌(アンモニア酸化細菌)による脱窒であることも明らかにしており、今年度、その研究成果をまとめて、発表した。
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