研究課題
(1)腸管上皮細胞の刺激によるサイトカイン産生を指標に、ストレス応答を抑制する食品因子の解析を引き続きおこない、ポリフェノール、スフィンゴ脂質、アミノ酸などによる抑制機構の一端を明らかにした。(2)IBDのモデル系として構築した腸管上皮細胞(Caco-2)とマクロファージ様細胞(THP-1)の複合培養(共培養)系において、Caco-2細胞側で免疫やアポトーシスに関与する遺伝子の発現の上昇が確認された。最も早く応答し、かつ発現量変動の大きいものとして転写因子IEX-1が見出されたことから、IEX-1が腸管上皮の炎症反応の鍵分子である可能性について検討した。レンチウィルスの系を用いてIEX-1を高発現あるいはノックダウンさせたCaco-2細胞の特性を調べた結果、IEX-1は腸管上皮細胞のアポトーシス誘導を抑制する分子として、ストレス条件下での細胞保護に寄与することが示唆された。また、傷害の誘導にはTNF-α受容体の発現変化が関わる可能性が示された。(3)20年度にマスト細胞として用いたRBL-2H3の性質が安定しないことから、21年度はヒト由来細胞株HMC-1を用いた。HMC-1に適用できる培養条件を検討した後、Caco-2細胞と共培養した結果、48時間後にCaco-2細胞の顕著な傷害が起こっていることが見出された。またHMC-1細胞では、数時間の共培養によって脱顆粒が起こっていることが見出された。(4)HMC-1は共培養によって形態変化することが見出され、腸管上皮細胞からの何らかの因子により分化が亢進すると考えられた。腸管上皮細胞からの因子がマスト細胞を刺激し、マスト細胞の産生する因子が、腸管上皮細胞の傷害を誘導するという図式はIBSの発症においても認められると考えられることから、これらの因子の解析を進めている。
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