研究課題/領域番号 |
20248017
|
研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
吉丸 博志 独立行政法人森林総合研究所, 多摩森林科学園, 園長 (20353914)
|
研究分担者 |
鈴木 三男 東北大学, 植物園, 教授 (80111483)
伊藤 元己 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (00193524)
舘田 英典 九州大学, 理学研究院, 教授 (70216985)
津村 義彦 独立行政法人森林総合研究所, 森林遺伝研究領域, 領域長 (20353774)
藤井 智之 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所, 支所長 (60353835)
|
キーワード | 日本産樹木 / DNAバーコード / 種識別 / 葉緑体DNA / 塩基配列情報 |
研究概要 |
森林総研と東北大学との共同による木材標本、さく葉標本、DNA用葉試料の収集、さらに大学演習林などに協力を要請したさく葉標本、DNA用葉試料の収集を合わせて、最終的に約6700個体、979種の日本産樹木種個体のさく葉標本とそのDNAを収集することができた。 DNAバーコード領域としては、2011年度においては、rbcL部分塩基配列(約600bp)、trnH-psbA間領域の塩基配列(約152bpないし983bp)に加えてmatKの部分塩基配列(約840bp)の解析を行った。最終的に、rbcLでは918種、5319個体、trnH-psbAでは864種、4515個体、matKでは610種、2454個体の配列を明らかにした。非常に広い範囲の系統群を対象とするためユニバーサルと言われるプライマーでも増幅効率が低くなる場合もあり、rbcLで91.8%、trnH-psbAで86.1%、matKで66.4%の増幅効率であった。 種の識別能力(他の種と明確に識別される種の割合)は、主要ターゲットとされたrbcLでは46%、matKでは60%、さらにrbcLとmatKの組み合わせでは63%であった。これに対して、trnH-psbAでは74%、rbcLとtrnH-psbAの組み合わせでは76%、matKとtrnH-psbAの組み合わせでは75%、3つの領域全てを組み合わせた場合では76%であった。rbcLは安定的にPCR増幅とシーケンスが可能であり、属レベルの同定に有効である。matKは、rbcLより種識別能が高いが、ユニバーサルにPCR増幅が出来ないという難点が残る。trnH-psbAは、変異性が高く良いシーケンスがとれれば種同定能力が高いが、長さが1000bp以上のものがあったり、単塩基反復配列が含まれていたりして安定的にシーケンスが出来ない場合がある。したがって、進化系統をよく反映するrbcLやmatKの情報をベースにして、さらにtrnH-psbAの情報を組み合わせて識別するのが実用的・効率的である。全世界共通の短いDNA領域の配列(バーコード)による識別は、日本産樹種については、主要ターゲットの2領域では63%、さらにtrnH-psbAを加えた3領域の組み合わせにより76%の有効性を示すことが実証された。
|