研究課題
本研究は、文化財指定建造物の保存修理で生じる取替え古材を、学術資産として系統立てて調査・収集・保存し、木質科学の立場からの材質評価と文化財保存修復学からの知見を総合したデータベースの構築をコアにして、国際的な共同研究ネットワークを構築することを目的としている。このため、1)文化庁等と協力して歴史的建造物由来古材の調査、収集、保存、並びにデータベース化を継続的に実施すると共に、2)歴史的建造物由来古材の材質評価では、特に、木材、紙、セルロースの熱処理材と古材の経年による色変化を系統的に検証し、リグノセルロース材料の経年色変化が基本的に緩慢な熱酸化反応によることを明らかにした。さらに、3)国際的研究協力ネットワークの構築に関して、国際森林研究機関連合林産部門Wood Culture(5.10.01)、東アジア文化財保存修復学会、EU COST Action IE0601への参加発表を行い、ネットワークの構築に努めた。これまでの歴史的建造物古材収集・研究実績と国内外の関連研究コミュニティのネットワークを基盤に、国際的な連携・協働を深める先導的な役割を担い、更なる発展の方向を探る機会として国際シンポジウムWood Culture and Science Kyoto 2011(WCSK2011)を開催した。当初、2011年3月21日~23日を予定し、準備万端整えたが、同年3月11日の東日本大震災の発生に伴い開催日程を延期して同年8月6日~9日に開催した。参加者は13ヶ国からの102名、基調講演4件、キーノート1件、口頭発表43件、ポスター発表46件、計94件の発表が行われ、震災による影響があったものの、国際学会としての規模と内容を整えることができた。会議では、1)木製文化財の修理修復など木の文化の視点、2)古材の診断と保存など木の科学の視点、3)歴史的木造建造物の木材など建築学の視点、4)遺跡の木材など考古学の視点にわたり、木の文化と科学に係わる多様な学際研究が発表され、研究分野ならびに研究者の国際交流が多いに促進されたと考える。
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