本研究は、深海および沿岸熱水環境から水素を生産するヒドロゲナーゼまたは二酸化炭素を還元するCOデヒドロゲナーゼ活性を有する好熱菌を分離し、菌の性状解析並びに酵素活性の検出を目的としている。また既に我々が分離した好熱菌からも上記酵素の性状解析とその遺伝子解析を行った。今年度の成果は以下の通りである。 (1) 沖縄トラフの伊平屋北深海熱水孔から55〜80℃で増殖する独立栄養性及び従属栄養性好熱菌を50株以上分離し、分類学的性状について調べた。そのうち至適増殖温度55℃で微好気性従属栄養性菌はThermacea科に属する新属腫で、性状解析や上記酵素活性を調査中である。 (2) 超好熱古細菌Aeropyrum caminiの培養株からヒドロゲナーゼ活性を見出し、培養細胞より各種カラムクロマトグラフィーにより完全精製を行った結果、至適反応温度が90℃を示し既報の酵素に比較して耐酸素性や耐熱性が極めて優れていた。本結果は、J. Biosci. Bioeng.誌に受理された。 (3) 中央インド海嶺の深海熱水環境から分離されたε-Proteobacteria綱に属する独立栄養性の好熱性水素細菌Hydrogenimonas thermophilaの細胞抽出液中に、ヒドロゲナーゼ活性が検出されたため本酵素遺伝子群の構造について解析を行った。その結果、他の熱水孔由来のε-ProteobacteriaではhypAとhypEの間に見られるhypXが本種では存在せず、熱水孔産のε-Proteobacteriaより病原性腸内細菌型のヒドロゲナーゼ遺伝子を持つことが明らかになった。
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