研究課題
本研究は、深海や沿岸熱水環境から水素を生産するヒドロゲナーゼ(H_2ase)または二酸化炭素を還元するCOデヒドロゲナーゼ(CODH)活性を有する好熱菌を分離し、分離株の性状解析並びに酵素活性の検出・精製やその遺伝子解析を目的としている。今年度の成果は以下の通りである。(1)超好熱古細菌Aeropyrum caminiを好気条件下85℃にて培養しCODHを精製した。本酵素の水素生産比活性は7.3mmol H_2/min/mg(85℃,pH6.0)で、4℃大気下で酸素耐性を調べた結果336時間後も50%の活性を維持し極めて強い酸素耐性を有していた。本酵素を交互積層法(LBL法)並びにシリカゾルゲルマトリクス法(SG法)にてGlassy Carbon上に固定化し、アンペロメトリー試験を行った。LBL固定化法において168時間にわたって水素生産が観察され、SG法より高い活性と持続時間が得られた。(2)深海熱水孔から分離された好熱性水素細菌Hydrogenimonas thermophilaを55℃、独立栄養条件(H_2:CO_2=80:20)にて培養し、H_2aseを精製してエドマン分解法にて内部アミノ酸配列を決定した。本配列をもとに本酵素遺伝子(hyp)群をPCR法にて調べた結果、H_2ase遺伝子は酸素耐性が強いε-proteobacteriaの[NiFe]-H_2aseと高い相同性を示し、オペロン構造を有していた。(3)鹿児島県指宿市の鰻温泉から、気相100%CO、64℃で増殖可能なCO資化性好熱菌を分離した。本分離株はCarboxydothermus属に属する新種で、対数増殖時にCODH活性が認められた。本株のCODH遺伝子をPCR法により解析した結果、ゲノム解析がなされたC.hydrogenoformansのCODH I~Vに相同性を有する5つのCODH遺伝子ホモログが見出され、各々異なるサブファミリーに属していた。次に、C.hydrogenoformans Z-2901株由来CODHIIコード遺伝子cooSII全長をpET28-aベクターに挿入し、大腸菌による発現系を確立した。組換えCODHは、CO酸化活性ならびにCO_2還元活性を保持していた。
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http://www.microbiology.marine.kais.kyoto-u.ac.jp/