研究課題/領域番号 |
20248025
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮崎 毅 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (00209892)
|
研究分担者 |
西村 拓 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (40237730)
井本 博美 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 技術専門員 (40419255)
|
キーワード | 塩類集積問題 / 温室効果ガス / 地球温暖化 / 物質循環 / ミッシングソース / ミッシングシンク / プライミング効果 / TSSR効果 |
研究概要 |
化石燃料の燃焼消費と人間による土地利用変化を起源とする炭素量は、消費の合計8.7PgC/Yrが大気中へもたらされるのに対し、大気、海洋、陸地が吸収する炭素量は合計6.9PgC/Yrと見積もられており、両者の差1.8PgC/Yrが炭素の行方不明(ミッシング)である(IPCC 1999,WMO 2006)。 本研究は、土壌圏を通過する物質収支を総合的に検討し、行方不明の物質(ミッシングシンク)と発生源不明の物質(ミッシングソース)を突き止めることを目的とする。ミッシングシンクで有名な炭素循環については、土壌圏が吸収・放出する炭素の再評価を試みる。ミッシングソースとしては、水分状態に連動する土壌からの温暖化ガス発生、いわゆるプライミング効果と呼ばれるCO2発生、水収支からの説明が困難な広域平原地帯の塩類集積問題、など、未知段階にある現象を解明する。 平成22年度の研究成果は、以下のように要約される。 1.地下水変動に伴う物質移動・集積現象の現地実態調査において、チュニジアの半乾燥地における塩分集積と地下水位変動の関連の現地モニタリングを行い、降雨イベントの量や頻度では説明できないような著しい浅層地下水位変動現象を見出した。この知見を国際誌(Hydrological Research Letters)に投稿したところ、査読後に受理され、公表された。 2.土壌へ堆肥などの有機物を投入することによる過剰なCO2発生現象(いわゆるプライミング効果)の長期測定を行い、有機物投与後3日以内で土壌の微生物相が劇的に変化し、多量のCO2発生が起こることを突き止め、この実験結果を、権威ある国際的総合学会として有名なGoldschmidt(USA)において発表(ポスター)した。 3.日常的な降雨の土壌浸透が、土壌有機物の活性に及ぼす影響、および、降雨が土壌からのCO2ガス放出に及ぼす影響を、圃場実験において追究し、画期的な成果を得た。すなわち、土壌の深さ20cmに降雨浸透水が到達すると、迅速にこの深さでのCO2ガス濃度が増加すること(TSSR効果)を突き止めた。これは、降雨のたびごとに繰り返すものであり、また、気温が高い夏季に著しい現象であった。この結果を、国内学術誌(農業農村工学会論文集)に投稿し、査読後に受理され、公表された。 4.熱帯雨林が広がるインドネシア、カリマンタンの森林火災跡地土壌を調査し、高熱にさらされた後の熱帯土壌の物理性・化学性の回復につき、知見を得た。この結果を国際ジャーナル(Journal of Tropical Forest Science)に投稿、受理され公表された。
|