研究概要 |
小規模湖沼の省力・省人的な水質モニタリング手法として水質観測用ロボットボートが開発した。衛星画像に基づいて湖沼を格子状に区切り,その一つ一つの格子の中心点を水質観測点として,その位置まで自律航行し,多項目水質計で水質を取得することで湖沼水質を面的に把握できる。同時にソナーにより水質観測点間を移動中に連続的に測深し,面的情報に展開できる。この開発システムを用いて北梅道美唄市宮島沼(以下,宮島沼)において水質,水深の空間データを取得した。しかし,水質観測実験において,衛星画像と実際の湖沼との間に差異が見られ,そのため航行可能エリアが変動することが判明した。この原因で岸付近の植生にボートが絡まり,身動きがとれなくなるトラブルが発生した。この問題への対処として,航行可能エリアを測量し,地図作成(マッピング)を行う必要性が生じた。測量の対象は,湖岸植生の水面側境界線の水平位置(汀線)である。そこで本研究では新たな課題としてボートの運用上必要な汀線マッピングを行う手法を開発した。宮島沼全域の汀線マッピングを行った。汀線地図作成に要する時間は1時間31分とトータルステーションを用いた人力による作業より能率的であった。測量誤差は,ヨーレートが0.7°/sの直進条件で12cm,ヨーレートが23°/sの蛇行条件で24cmであった。しかし,供試DGPSの誤差が66cmであることからシステムとして1m程度に測位誤差を内包している。湖沼の汀線マッピング結果は,湖岸植生がまばらに生えているため汀線より陸側に0.5mから3mの幅を持った帯状に検出されることがわかった。この実測結果と精度試験結果から,本システムにより作成された汀線地図からロボットボートの航行可能エリアを考えた場合,帯状の検出点群から2m程度湖沼内側に設定する必要性を認めた。
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