研究課題
家畜の育種では肉質などの生産形質を向上させるだけでなく、疾患などの生産性に負の影響を与える遺伝的な要因を除去することも重要な課題である。黒毛和種ではこれまでに多くの遺伝性疾患が発生し、家畜生産上大きな問題となっている。そこで、本研究では現在黒毛和種に多発している前肢帯筋異常症等の遺伝性疾患の原因遺伝子を同定し、その遺伝子診断法を確立するとともに、その機能の解析を行うことを目的として行われた。前肢帯筋異常症については、これまでに疾患原因遺伝子が存在する領域が特定されていたが、連鎖解析により疾患原因遺伝子の染色体上の位置をより正確に特定することを試みた。その結果、従来推測されていた位置の遠位側約2Mbの領域に疾患原因遺伝子が存在することが明らかとなった。そこで、本疾患のキャリア個体の全ゲノムの塩基配列を得て、当該の領域について、データベース上の配列および正常個体の配列と比較し、疾患の原因となる可能性のあるキャリア個体に特異的な変異を特定することを試みた。その結果、キャリア個体の当該領域にはデータベースの配列と比較して計6,194の塩基置換が存在し、そのうち1,226個はキャリア個体に特異的であり、さらにそのうちの6個は各遺伝子のエクソン等に存在し、これらの変異のいずれかが前肢帯筋異常症の原因となる変異である可能性が高いものと思われた。次に、これらの遺伝子における塩基置換について、すべての発症個体と正常個体について調べたところ、GFRA1遺伝子におけるナンセンス変異が発症個体に特異的であることが明らかとなった。GFRA1遺伝子は運動神経の発生に関わる遺伝子であり、その異常により骨格筋の形成異常が生じることがマウスで明らかされていることから、GFRA1遺伝子のナンセンス変異が前肢帯筋異常症の原因であることが結論づけられた。さらに、本塩基置換を検出するPCR-RFLP法により本疾患の遺伝子診断が可能であることが明らかとなった。
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