1) 癌幹細胞の分離・同定・培養 代表者が保有しているイヌ肥満細胞腫株からCD113をマーカーとして磁気ビーズ分離法により癌幹細胞を分離しようとしたが、0.1%程度の陽性率であったため分離不可であった。そこで、現在はFACSによる分離を実施している。また、ヒト乳癌細胞および中皮腫細胞から、無血清培地中でのSphere形成能を指標として癌幹細胞が中核となる細胞塊を分離することに成功した。これらの細胞塊が本当に癌幹細胞を含むものであるかについて、薬剤排出ポンプであるABCトランスポーターを発現することで、ヘキスト染色を取り込まないSide population細胞群の存在をFACSにより確認することが出来た。Side population細胞群は、ABCトランスポーター機能を阻害するべラパミルを添加すると消失したことから、癌幹細胞を豊富に含む細胞群であると考えられる。現在これらの細胞群をFACS分離しようと試みている。特に、中皮腫細胞には、レトロウイルスベクター技術を用いてGFP遺伝子を組み込み、GFP発現中皮腫細胞株3種を作成することに成功した。今後これらから癌幹細胞を含むSide population細胞を分離し、免疫不全マウスに移植することで生体内動態を探る。 2) 低酸素反応性遺伝子解析 乳癌や中皮腫細胞を免疫不全マウスに移植し、経時的に腫瘍局所の血流量を測定するとともに、サンプルを採取して低酸素反応性遺伝子HIFおよびその関連遺伝子の発現動態についてリアルタイムPCR法などを用いて調べている。 3) 血管新生3次元立体モデルの構築 GFP遺伝子を恒常的に発現させた中皮腫細胞を免疫不全マウスに移植し、経時的堂に血管造影およびCT断層撮影を実施して、腫瘍の増大に伴う血管新生の立体モデル構築を目指し基礎的なデータの集積を行っている。
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