研究概要 |
本年度の研究実績としては,負荷土壌に対処する根圏生物複合系の機能性のひとつとして注目した,根圏微生物コンソーシアム形成促進機能について新たな知見を加えた.中強酸性泥炭湿地に自生するチガヤ根面から分離したBurkholderia属細菌2株にSphingomonas属根圏微生物の増殖を促進する活性を見いだした。また,被検菌を混ぜ込んだ培地を用いるペーパーディスク法での検定作業中,同じ菌株が,リン酸可溶化能を持つとされるFrateuria属細菌の菌体外ポリマー産生を著しく増大させる活性を偶然見いだした.これらとは別に,インドネシア・南カリマンタンの酸性硫酸塩土壌耐性をもつイネ根から分離したBurkholderia mimosarumが日本のイネ苗坪枯れ病(イネ苗立枯細菌病)の原因菌であるBurkholderia plantariiのファイトトキシン(トロポロン)産生を抑え,B.plantariiによって排除される種子付着菌者の根圏での増殖を復活させることを明らかにした。しかもB.mimosarumはその毒素生産細菌を全く排除しないことが分かった。このB.mimosarumが産生するトロポロン産生抑制シグナル物質の捕捉を目指し,イネのコンテナでの砂耕による大規模培養を試みたところ,活性成分が効率良く得られた.また,根圏細菌から酸性耐性が極めて強い菌体外多糖を産生するRhizobium属細菌を分離した.さらに,熱帯泥炭地の亜酸化窒素生成菌では亜酸化窒素還元酵素(NosZ)が欠損していることがわかった。また,卵菌の感染を抑制する根圏細菌Pseudomonas jessenii EC-S101株は,放出するfuranone誘導体を用いて卵菌菌糸のセルストラクチャーをかく乱し,菌糸の形態を変動させることを明らかにした.植物に含まれるポリフェノールは腐植の蓄積要因となるが,その分解制御因子解明の一環として,エゾシカルーメン微生物のマクロゲルカプセルでの固定化によるタンニン分解を行い,効率的なタンニン加水分解反応の進行を確認した.
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