研究概要 |
インドネシア,中央カリマンタン州の熱帯泥炭林に適応した現地自生Shorea balangeran幼木根から分離した細菌株,Burkholderia unamae CK43Bのindole分解能を調べ,植物の根に広く含まれているピロガロール構造を持ったポリフェノール類(例えばタンニン酸,没食子酸,(-)-エピガロカテキン,さらにはピロガロールそのものが添加されている状態にあっては,indole分子内のピロール環の生物的開裂活性さらには分解中間体であるアントラニル酸の酸化的脱アミノ基反応を活性化することを見いだした。この活性上昇は,細菌株が窒素飢餓状態にあって,これらのポリフェノールが0.5mMから3.0mM程度の範囲内で効果的であったことから,ポリフェノールリッチな植物根表面においても,土壌中ポリフェノール類と反応して安定化した含窒素芳香族化合物(NHAC)を効率よく窒素源として利用できると推定された。熱帯泥炭開墾地で強力な亜酸化窒素放出細菌として分離した2種類目のBurkholderia vietnamiensis 322-B株および植物根に鞭毛が融合するLysobacter sp.株について全ゲノム解析を行い,植物根周辺で細菌が定着する理由を探るためのゲノム情報を得た。一方,Nostoc sp.と植物の関係についてはホルモゴニウム誘導と植物根に含まれる1-palmitoyl-2-linoloylglycerolとその関連化合物についてホルモゴニウム誘導能を調べた結果,1-palmitoyl-2-linoloylphosphatidic acidや1-palmitoyl-2- oleoylglycerolには活性がなく,分化誘導のスイッチングに関わる分子は極めて特異性が高い可能性が示唆された。本化合物によるsigH遺伝子の転写活性の変化をRT-PCRで追跡している。また,シアノバクテリアが共生する他のコケにこのホルモゴニウム誘導因子あるいは分化拮抗因子が存在するかどうかを調べている,フェザーモス抽出物には特徴的な応答(糸状体のバンドル化)が認められ,その活性本体は現在,探索中である。
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