研究概要 |
本研究では,農業など人為活動の介入の結果,本来自然生態系において必要不可欠なものであった「土壌生態系のホメオスタシス」が損なわれ,土壌酸性化,水系への栄養塩の流出,土地生産性/肥沃度の低下,砂漠化といった環境問題が現出してきた過程を実証的に検討・克服することを目的として,生態系の資源獲得プロセスを記述する速度論的元素動態モデルの構築を行う。平成20年度には,各調査地において気象要素・元素動態のモニタリングを行うとともに,以下の成果を得た。 1)湿潤条件下における鉱物風化プロセスのモデル化を目指した一連の研究を行った。マフィックな母材から生成した土壌において早期のカオリン化が見られるのに対し,フェルシック母材からの風化プロセスとして,アスティック土壌水分条件下における緩慢なカオリン化とユーディック条件下における膨潤性2:1型鉱物の特徴を強く引き継いだ強酸性風化が大別された。 2)土壌微生物動態記述のためのラボ実験を行った結果、微生物群集のグルコース利用において異化(呼吸)/同化割合が急増するような閾値添加濃度が存在することが明らかとなった。またタイおよびタンザニアにおける圃場実験の結果,乾湿変動に伴う微生物活性の短期的増減が全ての圃場において観察されたのに対し,微生物バイオマスの変動は砂質土壌においてのみ見られた。さらにトウモロコシ生育後期には,微生物と植物の間に窒素利用を巡る競合がおきること,また微生物バイオマスを一時的な窒素養分プールとして利用することが可能であろうことが明らかとなった。これら土壌有機物・微生物バイマス短期動態は,貧栄養である砂質土壌でより重要な役割を果たしていると考えることができる。 今後植物サブモデル,植物・微生物共生サブモデルと併せて,元素動態モデルの構築を行う。
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