研究概要 |
人類史において,農業の発明は総体としての生態系の改変を目指した第一歩として記憶されるべきであろう。そして多くの環境問題の根源もまた,農業活動の開始に求めることができる。本研究では,農業など人為活動の介入の結果,本来自然生態系において必要不可欠なものであった「土壌生態系のホメオスタシス-動的平衡状態」が損なわれ,土壌酸性化,水系への栄養塩の流出,土地生産性/肥沃度の低下,砂漠化といった環境問題が現出してきた過程を実証的に検討した上で,これを克服する-ホメオスタシスを回復する-方途を考える。 その手段として,本研究では,生態系の資源獲得プロセスを記述する速度論的元素動態モデルの構築を行う。このモデルでは,土壌生態系において,酸および主要元素のシンクまたはソースを形成しうる3つのコンポーネント(植物バイオマス,土壌有機物,土壌鉱物・岩石)および土壌有機物フラックスを規定する土壌微生物活動(機能因子)を想定し,各コンポーネントにおける各元素の放出・吸収を,それぞれ対応するサブモデルによって速度論的に記述する。ここでの平衡状態をホメオスタシスとして捉え,農業等人為活動によるホメオスタシス破綻に伴う環境問題発生のプロセスおよびその境界条件を明示することを目指す。
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